ガガガ文庫の雨森たきび先生原作の「負けヒロインが多すぎる!」のアニメでは、4話ごとにエンディングの楽曲が変更されている。
シーズン1のエピソード1から4までは、八奈見杏菜が歌う「LOVE2000」
シーズン1のエピソード5「朝雲千早は惑わせる」のエンディングからは、焼塩檸檬(やきしおれもん)が歌う「CRAZY FOR YOU」になるのだが、これがまた非常にエモい。
この「CRAZY FOR YOU」が良すぎて、「負けヒロインが多すぎる!」マケイン応援!カバーソングコレクションを購入している。
購入したことに後悔はない。
目次
- 1 エモさを説明するための、焼塩檸檬(やきしおれもん)の失恋
- 2 オリジナルは恋愛ソング
- 3 失恋ソングにかわる瞬間
- 4 エモいと感じた部分を書いていく
- 4.1 檸檬ちゃんの前を過ぎていくあまたの星々
- 4.2 水の底に沈む大人になった檸檬ちゃん
- 4.3 綾野くんの星が、檸檬ちゃんの前に現れる
- 4.4 みんな居たけど、誰もが孤独なんだよ
- 4.5 少しにぎやかになるまでの期間
- 4.6 更に時は流れていく
- 4.7 When life gives you lemons, make lemonade.
- 4.8 2031年7月7日の連絡
- 4.9 秘めていた、鎮静化させていた恋心が動き始める
- 4.10 徐々に浮かび上がる思い
- 4.11 心の解放と懐古する姿
- 4.12 ただ、もう一度会いたいという気持ち
- 4.13 綾野くんの星を追いかけていく
- 4.14 現実は非情。また檸檬ちゃんは綾野くんに届かない
- 4.15 王子さまは遅れてやってくる
- 4.16 迎えに来てくれた。差し出される綾野くんの手、
- 4.17 綾野くんの手を取る檸檬ちゃん
- 4.18 檸檬ちゃんの世界は、煌びやかに輝く世界に変わる
- 4.19 めでたしめでたしの少しまえ
- 4.20 二人は幸せに過ごしましたとさ。めでたしめでたし
- 4.21 お風呂からのシーンは、どう見るか。
- 5 特に感じたこと
エモさを説明するための、焼塩檸檬(やきしおれもん)の失恋
負けヒロインとして1敗目「プロ幼馴染八奈見杏菜の負けっぷり」から登場する陸上女子。よく日焼けしているため「褐色女子」として描かれている。
距離感が多少バグっているものの、明るくほがらかな性格であるため陸上部女子部員だったり、中学の後輩にも慕われている。
また、天然系のバカキャラとしても描かれているため、小鞠知花(こまりちか)を元気づけるためにクワガタを探しに行ったり、学園祭のミイラコスプレで下着を着けていなかったりと元気な檸檬ちゃんのエピソードは十分にある。
ただ、親や祖母をはじめ学者や弁護士などが多い家系で、妹もまた賢い。しかし自分だけが勉強ができないうコンプレックスを抱えている。
そんな檸檬ちゃんが恋に落ちたのは、小学校のときに本ばかりを読んでいた綾野光希(あやのみつき)
小学校2年生の頃。
足をケガした檸檬ちゃんは、ずっと本を読んでいた綾野くんの隣に座り、綾野くんに本の話しを聞くという関係がはじまった。
本作品の舞台でもあるツワブキ高校を目指したのも綾野くんと一緒に居たかったからだ。
原作1巻2敗目の「約束された敗北を君に」で、文芸部に本を借りたいと檸檬ちゃんと一緒にやってきた綾野くん。
文芸部副部長の月之木古都(つきのきこと)から、檸檬ちゃんとの関係性を問われ「俺、彼女いますから」で檸檬ちゃんは綾野くんに彼女がいることを知った。
その後、原作2巻2敗目「朝雲千早は惑わせる」で、檸檬ちゃんは口をすべらせ「あたしの惚れた男なんだから」を聞かれたあと、地下資源館から逃げ出してしまう。
檸檬ちゃんはきっと、綾野くんに追いかけてもらいたかっただろう。
想い人が追いかけてくれるという一縷の望みを持って、地下資源館から逃げ出すんだ。
追いかけてくれたのは、本作の語り部である温水和彦(ぬくみずかずひこ)
走るのが大好きな女の子はある日、一人の男の子に出会いました。
その男の子はいつも本ばかり読んでいました。
男の子は、女の子に本の話しをたくさんしてあげました。
二人は仲良くなりましたが、実はその男の子は王子様でした。
王子さまは大きくなったら、お城に行ってしまいます。
女の子もお城に行きたかったけど、礼儀作法を知らないし、舞踏会のダンスも踊れません。
悲しむ女の子を見て、王子さまは一緒に礼儀作法とダンスの練習をしてくれました。
女の子は王子さまと一緒にお城にいけるように一生懸命、練習しました。
そうして、女の子は王子様とお城に行くことができました。
めでたしめでたし
その後、別の日の夜。
檸檬ちゃんは、綾野くんと思い出の小学校で話をする。
「ね、あの星すごく明るくない?北極星?」
「北極星は違う方向だよ。明るいなら夏の大三角形かな。ほら、大きな星が三角の形に並んでいるだろ?」
「んー。一つだけしか見つかんないや。なんか赤いし。火星とかだったり」
「あれはさそり座のアンタレスだったかな」
「ふうん、サソリなんだ」
…同じ空を見上げながら、自分と光希は違う星を見ている。
檸檬は寂しく思いながら、朝雲千早のことを思う。
檸檬ちゃんと綾野くんが、それぞれどういう風に見えているのかは、夏の星座で確認してほしい。
出典:夏の星座/88星座図鑑
オリジナルは恋愛ソング
オリジナルは、Kyleeの2011年10月発表の作品である。
正直、私はこの頃はメタル全盛期で、負けヒロインが多すぎる!で初めて知った。
最初に見た印象は、Superfly?であった。
失恋ソングにかわる瞬間
歌詞の内容は、恋愛中の方で会いたい気持ちが溢れてくる内容となっている。
しかし、檸檬ちゃんの綾野くんへの想いから失恋までの流れを知ってしまうと途端に、失恋ソングに切り替わるのだ。
檸檬ちゃんの声優、若山詩音さんの声質が素晴らしい。
檸檬ちゃんの綾野くんへの捨てきれない想い。綾野くんが迎えに来てくれたときの表情。心をかきむしるような心象を実に透明感溢れる声で歌いあげている。
会いたい、会えない、もどかしくって
知りたい、触れたい… 心奪ったのはキミなんだ
届け この思いよ 夜空はキミへの滑走路
ハートを揺らすよ キミの声
お願い これ以上 じらさないで
かけ引きなんてできなくって
今すぐ会いたいよ
I'm just crazy for you
この部分は、とくに檸檬ちゃんが綾野くんと小学校で話したときに
「光希、あたしのこと好きだったんだね」
と過去形で話したあたりから、両想いだったのに成就できなかった想いが苦しくなるほど降り積もったんだろうなと考えてしまう。
エモいと感じた部分を書いていく
檸檬ちゃんの前を過ぎていくあまたの星々
リアルに描かれている檸檬ちゃんの目の前、たくさんの煌めく星が流れていく。
ただ、どの星も檸檬ちゃんを動かすほどでもなく、ただ眺めているだけ。
きっと、多くの男性が檸檬ちゃんの前に現れては去っていったのだろう。
水の底に沈む大人になった檸檬ちゃん
なぜなら、綾野くんへの想いを心の奥底に沈めて、意図的に起きないようにしている。
綾野くんへの想いを大事にしているがために誰にも起こされたくない感傷の状態なのだろう。
綾野くんの星が、檸檬ちゃんの前に現れる
星座の話しで、夏の大三角形があった。
夏の大三角形といえば、天の川で彦星と織姫である。
檸檬ちゃんと綾野くんになぞらえているのであろう。
ひときわ大きく煌めく星は、きっと綾野くんである彦星なのだろう。
みんな居たけど、誰もが孤独なんだよ
宇宙服を着て、何もないところで檸檬の種を植える檸檬ちゃん。
ここからの描写は、心の傷を癒すには時間しかないということと。見えるけど届かない交われない孤独感なのだろう。
少しにぎやかになるまでの期間
檸檬は種から実がなるまで5~7年かかる。
更に時は流れていく
When life gives you lemons, make lemonade.
レモネードではなくレモンティーだが、檸檬ちゃんは「忘れて次の恋を探そう」としていたのかも知れない。
2031年7月7日の連絡
7月7日は七夕だ。
彦星が織姫と出会える1年にたった1日だ。
檸檬ちゃんに降ってきたのが、綾野くんである彦星であるとわかる。
秘めていた、鎮静化させていた恋心が動き始める
透明な膜のようなものが檸檬ちゃんを包んでいる。
葛藤だ。
心にしまいこんだ、大事にしていた綾野くんへの想い。
また傷つくのは怖いし、そのままにしていた方が楽なのに、ただ、それでも綾野くんに会いたいという気持ち。
そして葛藤のすえ、檸檬ちゃんは心の奥底から綾野くんへの想いを解放する。
徐々に浮かび上がる思い
心の奥底閉じ込めていた気持ちが、すこしずつ浮かびあがってくる。
不安もある。このまま本当に気持ちに流されていいのだろうか?
大人の檸檬ちゃんは自分を抱いたままだ。
心の解放と懐古する姿
水面に出た檸檬ちゃんの姿は、綾野くんに告白したときの姿、高校生の頃に戻る。
ただ、もう一度会いたいという気持ち
檸檬ちゃんが選んだのは、もう一度夢を見てもいいんじゃないかということ。
檸檬ちゃん自身が語った、女の子と王子様の話しのように。
綾野くんの星を追いかけていく
歌詞にある「夜空はキミへの滑走路」
綾野くんを追いかけるために、檸檬ちゃんは走り始める。
現実は非情。また檸檬ちゃんは綾野くんに届かない
心が苦しい。
檸檬ちゃんはまた、綾野くんに置いていかれたのだ。
王子さまは遅れてやってくる
迎えに来てくれた。差し出される綾野くんの手、
綾野くんの手を取る檸檬ちゃん
檸檬ちゃんの世界は、煌びやかに輝く世界に変わる
めでたしめでたしの少しまえ
驚く檸檬ちゃんは、さっきまでの涙が嘘のようだ。
綾野くんと踊る檸檬ちゃんは、本当に幸せそうで一コマ一コマが素敵に描かれている。
二人は幸せに過ごしましたとさ。めでたしめでたし
綾野くんに連れられて、檸檬ちゃんはめでたしめでたしと話しを締めくくる。
お風呂からのシーンは、どう見るか。
大人になった檸檬ちゃんの顔が、掬ったお風呂のお湯に映っている。
憂いを帯びた表情から、「そんなことはない」と思っているのか、「浮かれてどうする」と思っているのか。
特に感じたこと
個人的な解釈として、
檸檬ちゃんに綾野くんから連絡があって、懐かしい気持ちと綾野くんが迎えに来てくれるかもという変わらない乙女心が揺れ動いたのだろうか。
2024年10月8日現在7巻とSSSまで発行されているが負けヒロインが多すぎる!の原作1巻は、2021年7月26日に初版となっている。
作中、檸檬ちゃんは1年生から物語が始まる。
このエンディングで綾野くんから檸檬ちゃんに連絡が入ったのが2031年7月7日。
高校一年生は16歳であるから、単純に檸檬ちゃんは26歳(誕生日の設定は8月1日)
私自身は一度も同窓会に誘われたことがないが、同窓会のお誘いかな?と感じた。
だからこそ、高校生のときに恋した綾野くんへの想いが爆発してしまう。
なぜなら、綾野くんに会えるであろう期待、次は朝雲さんではなく檸檬ちゃんを選んでくれるのではという期待。
でもそれは子供染みた考えだと自分を見つめている姿、綾野くんが選んでくれなかったらどうしようという不安。そもそも綾野くんは誰かと結婚しているのでは?と期待と不安などが入り混じった状況がラストのシーンではないだろうか。
純粋な檸檬ちゃんが思春期の恋を抱えて大人の女性になったという流れが非常に素晴らしい。
YouTubeのコメントでも残したが、
きつねの子シリーズのきつねの子のように純粋な檸檬ちゃん。
朝雲さんが嫌いな私としては、綾野くんを朝雲さんから奪って欲しかった。
高校卒業後に別れたかもしれない。それでも、檸檬ちゃんの幸せたのために動いて欲しかったなと思う。