今から30年ほど前になる、1994年2月23日。
hideのファーストアルバムHIDE YOUR FACEは発売された。
昨今のようなストリーミング技術もなく、P2PのWinnyも開発されていない頃。情報源は音楽雑誌で音楽番組だった。
そんな時代にhideのアルバムが発売される!とわかった時点で近所の電気屋さんでアルバムを予約したのではないかと思う。
が、なにせ30年も前なので正確なことは覚えていない。
hideがソロデビューし、8㎝シングルCD2枚を発表した。
両方とも瓶詰めされたhideのイラストで赤っぽい色のジャケットの50%&50%。緑っぽい色のジャケットのEYES LOVE YOU。
次に発売された8㎝シングルDICEは、石づくりのオレンジ色の羽のジャケットだったと思う。
そして、満を持して発売されたのがアルバム「HIDE YOUR FACE」になる。
なぜ「HIDE YOUR FACE」というタイトルになったのか?というところで、「ひで」ではなく「はいど」と呼ばれることがあり、そこからこのタイトルになった云々といった記事を目にした記憶があるが、何も証拠は残っていない。
顔を隠す→鉄仮面→ギーガーとつながっていき、立体造形の初回限定版アルバムになっている。
いまだ、このアルバムとバンドスコアは手放せずにいる。
なぜなら、私のギターを始めるキッカケで初期衝動の塊であるからだ。
目次
- 1 初回限定版の立体造形
- 2 バンドスコア
- 3 1:PSYCHOMMUNITY
- 4 2:DICE
- 5 3:SCANNER
- 6 4:EYES LOVE YOU <T.T.VERSION>
- 7 5:D.O.D. (DRINK OR DIE)
- 8 6:CRIME OF BREEN St.
- 9 7:DOUBT <REMIX VERSION>
- 10 8:A STORY
- 11 9:FROZEN BUG '93 <DIGGERS VERSION>
- 12 10:T.T.GROOVE
- 13 11:BLUE SKY COMPLEX
- 14 12:OBLAAT <REMIX VERSION>
- 15 13:TELL ME
- 16 14:HONEY BLADE
- 17 15:50% & 50%<CRISTAL LAKE VERSION>
- 18 16:PSYCHOMMUNITY EXIT
- 19 1998年5月2日
初回限定版の立体造形
うむ。これは非常に格好いい。
VHS(DVDでもBlu-rayでもなくビデオである)でA Souvenir(スーベニア)ではDICEのビデオクリップが非常に格好良い。
このA Souvenirは、非常に蛍光色強めな色味に内臓(腸)のグロテスクさが混じった点、ピンク色の発情している熊など面白い装丁をしていたと思う。
ぼこぼことした造形。
目だけが空いている絵本のような仕組みも素晴らしい。
学生証を、この仮面の男バージョンのように、左目以外を真っ黒にマッキーで塗ったことで教師に怒られた記憶がある。
ただ「持ち物検査のときは、消しゴム使ってもとに戻しておいて。持ち物検査終わったらまたやりな」といった感じであったため、このウルトラマン好きの理科教員の授業はキチンときいていた。
目をカッと開いているhide。
軍服なのはDICEのミュージックビデオが元になっており。日本刀を抱え軍帽や顔を手ぬぐいで覆っていた気がする。
手塚治虫の何かにインスパイアされたとかだった気がする。
この帯が、画像の通り微妙に縦に長いため、横にして収納していた。
飽きるほど聴いたきたが、それでも曲順をパっと見たいというのはあって縦に収納出来たらよかったと思う。
バンドスコア
ごらんのとおり、ボロボロである。
発売から30年近く経った今でもDICEは弾ける。それくらいいっぱい練習してきた。
hideの髪はSpread Beaverのショッキングピンクのイメージが強いが、私個人はこの赤からオレンジ色の髪のイメージが強い。
アルバム発売から2か月後にスコアが発売。
耳コピなんてできないくらい音楽の才能がなかったので、発売は本当にうれしいものだった。
1:PSYCHOMMUNITY
アルバムの1曲目は、instrumental(インストゥルメンタル)。
しばらく無音で、ノイズのように逆再生された楽曲が重なって流れてきて、EYES LOVE YOUのメロディでギターが始まる。
ゆったりした雰囲気で曲は進むが、ディストーションの効いたギターのスクラッチが入り行進曲のように勇ましく明るい曲調になる。
マーチングで表現される疾走感や、これから始まるアルバムの楽曲への期待感がどんどん高まっていく。
そして3:50あたりからの曲の終わりを思わせるようなリズムへと切り替わっていく。
これはCDでしか体験できないかも知れないが、このPSYCHOMMUNITYからDICEへつながる瞬間は鳥肌ものである。
2:DICE
ディストーションが効いたギターのスライドと2バスのドコドコ、リードギターの2弦3弦をかき鳴らす音で曲はいきなり最高潮で始まる。
まさにロックな曲。
繰り返しになるが、発売から30年経ち、私はギターを全く弾かなくなって10年は経つが、それでもDICEは弾ける。
ギターソロは指が付いて行かない気がするが・・・
私は、バンドを組んでギターを弾くという機会が非常に数少なかった。
そのため、CDを聴きながらアンプやエフェクターでひずんだ音をかき鳴らすばかりだった。
ある程度弾けるようになってくると、「自分が弾きやすくかつ、気持ちいリズム」で弾く事に変遷していったが、本作は、ギター格好いい。の源泉である。
もちろん、Xの紅だとかも大好きだった。
しかし、DICEは曲だけではなく、ドラムのテリー・ボジオ、ベースのT.M.スティーヴンスとの出会い方、ビデオクリップの映像と何もかもが格好いいと思えた。
ビデオクリップでは、明治っぽい雰囲気の中で軍服・軍帽に顔を半分隠したhideが女性を抱えるシーンや、火炎放射器から放たれる炎など。非常に耽美である。
3:SCANNER
バッキングギターが正確無比なリズムで延々と続く。ギターを弾く上では非常に退屈な曲である。
本作よりも、シングルCD「TELL ME」のB面に収録されていたLUNA SEAのRYUICHIと愛のデュエットバージョンの方が好きだ。
この愛のデュエットバージョンで、私はLUNA SEAを知り、LUNACY名義まで遡ることになるがそれはまた別の話だ。
ギターソロは、DOUBTと同じく怒りの感情を感じるものとなっているが、DOUBTほどのパンチはないと思っている。
4:EYES LOVE YOU <T.T.VERSION>
シングルと同じ曲だが、DICEのときと同じくドラムにテリー・ボジオ、ベースにT.M.スティーヴンスが加わっている。
が、BLUE SKY COMPLEXの方が、好きだ。BLUE SKY COMPLEXの方はあえて、ノリに乗ったT.M.スティーヴンスの声を残しているからこそ余計に、あぁ。T.Tバージョンだなぁって齧る。
作詞は、森雪之丞氏。
布袋寅泰のPOISONでも有名な森雪之丞氏である。
・・・君の孤独を 薔薇に変えて
・・・毎朝 水をあげよう
・・・悲しい日は そのトゲで痛みを伝えてくれ
君は 50%&50%
引用:hide 50%&50%
歌詞も50%&50%の方が格好いいと思っている。
EYES LOVE YOUは、hideの初期ストラップで目玉が付いていたので、個人的にグロさを押し出したかったのかな?と思うくらいでシングルCDを聴いたとき以上の興奮も興味もでなかった。
5:D.O.D. (DRINK OR DIE)
この曲もディストーションが効いたギターのスライドから始まる。
非常にPOPながら、単音のリフやコード弾きと楽しい。あと、初めてこの曲で「ブレイク」というものを知った。
ブレイク後のテンポは「a Tempo.(Fast)」である。
このハチャメチャな疾走感が最高である。
酒のみの歌ではあるが、私は一切アルコールが飲めない。
そのため、酔いどれの気持ちを理解できないまま。曲だけを楽しんいる。
6:CRIME OF BREEN St.
アルバムの小休止のように挟まれたinstrumental(インストゥルメンタル)になる。
静の曲で、このあとに続く動であるDOUBTの布石となっている。
え?曲の中にSE入れてもいいんだ!っていうのをこの曲が教えてくれた。
7:DOUBT <REMIX VERSION>
DOUBTはシリーズになっていて、シングルのDOUBT、本アルバムのDOUBT <REMIX VERSION>、Ja,ZooのDOUBT'97(MIXED LEMONed JELLY MIX)
zilchのDOUBTは英語で歌ってるのに日本語に聞こえるという空耳を利用している。
なんとも一粒で美味しい曲だろうか。
シングルは曲が始まるまで非常に長く感じ、Ja,Zooの「絶対、嘘じゃん」が格好いいので97バージョンをおすすめしたい。
また、ビデオクリップのスーツ姿のhideがめちゃくちゃ格好いいのだ。ショッキングピンクの髪なのに、スーツがバシッと決まっている。
シングルCDでDOUBTを聴いたとき、どうやったらこんな歪んだ声になるのか?というのに頭を悩ませ。
どうやったら、マイクをギターのエフェクターを通してディストーションをかけられないか?というのを悩んだものである。
8:A STORY
静かなスチームパンクの世界。といったイメージを持った曲。
激しい曲ばかりではなく、箸休め的に入ってくる静かな曲なのに、フランジャーがしっかり効いている感じがhideっぽいなと思った。
9:FROZEN BUG '93 <DIGGERS VERSION>
「MxAxSxS」名義での作曲。
一つ前のA STORYのスチームパンク感は、この曲のせいだと思っている。
面白いのは面白いし、インパクトも強いのだが、ギターを弾くための聴く曲ではなかったので印象は薄い。
10:T.T.GROOVE
ドラムのテリー・ボジオ、ベースのT.M.スティーヴンスの即興曲。
スタジオを借りたことがある人ならわかる。防音室になっているスタジオの外にうっすら聞こえる感じや、ドアを開けた瞬間に爆音になる感じ。
「おはようございます!」というhideの声が聞こえてきそうな雰囲気など、すべてがギターキッズのバンドの記憶っぽくて好きである。
11:BLUE SKY COMPLEX
雑誌か何かで「灰色の空はもう嫌だ。青い空が見たい」的なことを言っていた気がするが、同じく何もエビデンスは残っていない。
非常にファンクでロックで、跳ねる感じの楽曲。
曲の途中から、T.M.スティーヴンスのめちゃくちゃハイトーンで「Ahhhhhhhhh!」というノリノリのシャウトが始まり曲の終わりまで続く。
余計にファンク感が高まるのだが、hideの歌声は反面テンションが低い。
このギャップが余計に面白い。
12:OBLAAT <REMIX VERSION>
OBLAATは、シングルEYES LOVE YOUのB面収録になる。
BLUE SKY COMPLEXの次にこれか・・・という気持ちは非常に大きかったため、MDに録音する際は、OBLAATはいつもスタメン落ちしていた。
13:TELL ME
華やいだ風にさらされても、ギターのバッキングはゴリゴリである。
言わずと知れたCMソングになった。
Tell me, 誰か tell me, Please tell me.
君には僕が見えているか
Tell me, Somebody tell me, Please tell me.
僕には僕が見えない
引用:hide TELL ME
ここの一節が非常に好きだ。
POPな曲なのに、ここの独白のような部分だけが南国のような雰囲気に変わる。
hideは、小さい頃太っていて運動も苦手だった。しかしギターを手にした彼はヒーローになった。
その当時を振り返る曲ではなかろうか?と個人的には思っている。
「君」は、この曲を聴いている人、松本秀人から見たhideかもしれない。
「僕」は、松本秀人・hideの両方が入るのかもしれない。
だからこそ、曲の終わりは2つの人に向けている。
14:HONEY BLADE
POPで明るいTELL MEから一転して、重苦しい雰囲気しかない曲につながる。
しかし、冒頭の4つのコード進行を弾くだけでも、「ギター弾けた!」がすごくて、ギターソロやバッキングでつまずいて心がくじけそうなときの救済曲になっていた。
私が高校生・大学生の頃に作詞・作曲した暗い曲は、HONEY BLADEが原型になっていたので影響力はすさまじいと覆う。
歌詞は、子供が産まれてその成長を見守っていたが。的なお話しになっている。
15:50% & 50%<CRISTAL LAKE VERSION>
シングルカットは最初から最後までロックだったが、アルバムの方は違う。
池がありそうな森の中で、ラジオから流れてくるシングルバージョンの50%&50%。ラジオ特有の音の揺れやノイズ、うるさいとラジオを切って、カウントダウン。
アコースティックギターでカントリー調の50%&50%が始まる。
妻がディズニーが好きで、カントリーベアなどを視聴する機会があったが、この曲はカントリー調でウキウキしてくるが、一つだけ残念な点がある。
このままカントリー調で終わるのかな?と思いきや、ロックテイストに戻るわけだ。
正直、この部分は発売されて聞いた当初も、今も変わらず。そこはそのまま終わろうよ。
と思う。
16:PSYCHOMMUNITY EXIT
20分ある。
このアルバムがレコードでした。って感じで、古ぼけた音源でどこか温かい音で、レコードにある音飛びが表現されている。
その後、レコードのノイズが延々と続くが、ブーツのような硬質な足音が聞こえる。
何かをしていて、レコード終わってるじゃんと、閉める音がして本アルバムが終了する。
1998年5月2日
大学生だった当時の私は、友人宅で一緒にテレビを観ていた。
そこに飛び込んできたのはhideの訃報だったが、現実感はなかった。
その頃になるとhideだけではなく、色んなバンドの曲をギターで弾いていた。
X Japanでのいざこざもあったが、Spread Beaverとして活動していたhideは好きだったし、ROCKET DIVEだけはしっかり弾けていた。
その後、トリビュートだとかいろいろなアルバムがhideの死後、HDDから音源が見つかったと発表される様は、不快な気持ちになった。
未発表のままよりも発表されて世に出た方がきっとよい。と理解はしていたがどうしてもhideを利用しているような気がしていたからだ。
色々思う気持ちはあったが、hideのHIDE YOUR FACEを手放せずに持っていたのは、私のギターヒーローはhideだったからだ。
当時の年上だったhideは、随分と年下になってしまった。
しかし、このアルバムを聴くと、あこがれのギターヒーローであるhideを眺める高校生に戻った気持ちなる。
崇拝ではなく、信仰でもない。ただ、あこがれただけだ。
まるでそれはPINK SPIDERで蝶を羨ましいと思う蜘蛛のように。